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【AI活用先進企業特集】「今日、何時に終わるんだろう」FAX注文の手入力を1時間から10分にしたUmiosロジの挑戦

2026.10.29生産性向上
AI活用先進企業インタビュー Umiosロジ株式会社「いったい何時に終わるんだろう」

多い日には、1日で100枚を超えるFAX注文が届くUmiosロジ株式会社の名古屋物流センター。注文書のフォーマットはお客様ごとにまるで違う。商品名の書き方も、数字の並びも、賞味期限の記し方も、取引先の数だけ流儀がある。それを一枚ずつ目で追い、手で打ち込んでいく。朝、机の上に積み上がった束を前に、名古屋物流センターで働く大坪さんはよくこう感じていた。

「今日、いったい何時に終わるんだろう……」

Umiosロジ株式会社は、冷蔵倉庫から通関まで、食品の流通を支える約500名規模の物流企業。その現場で長く当たり前とされてきた、FAX注文書の手入力。この地味で終わりの見えない作業の改革に、ある一人の人間が本気で向き合い始めた。かつて、自分自身が同じ書類の山の前に立っていた男だった。

積み上がるFAXに反比例して、下がっていくモチベーション

経営企画部で業務改善を担当する中島さんは、以前は物流センターの現場に長く身を置いていた。だからこそ、あの作業の大変さを、他人事としてではなくリアルに想像することができる。

「毎日FAXの処理に追われ、気づけば書類が山積みに。同じ業務の繰り返しで、モチベーションも下がっていました。『この作業をどうにか自動化できないか』と、現場にいた頃から常々考えていたんです」

注文書を一枚ずつ人の目で確認し、人の手で入力していく。時間がかかるうえに、人的ミスも頻発していた。早く打とうとすれば間違いが起こり、間違いが起これば手戻りが生まれる。現場を経験した人間なら、その絶望感がわかる。

「この作業をなんとか自動化したい」——その願いは、現場を離れても中島さんの中に残り続けた。そして経営企画部への異動が、願いを実行に移す機会になる。

インタビューに答えるUmiosロジ株式会社 経営企画部の中島さん

業務効率化のために、業務が増えるという矛盾

業務効率化のために、中島さんはAI-OCR(AI画像認識システム)の導入を検討し始めた。紙の注文書をAIが読み取り、自動でデータに変える先端技術だ。理屈のうえでは、現場を長年苦しめてきた課題の最適解になるはずだった。だが、実際に各社の話を聞いてみると、大きな壁にぶつかった。

「複数社の話を聞きましたが、多くのシステムは自社での設定が必要で、その工数が大きな課題でした。当社の業界では定型化された帳票は少なく、多様な帳票ごとに細かな設定が必要で、それだけで多くの人的リソースが取られてしまうんです」

業務を効率化するために、膨大な業務が発生する。それでは完全に本末転倒である。中島さんがこだわったのは、誰にも負担を強いることなくAI-OCRを現場にインストールするための体制。粘り強く業者を探し、最終的に設定から運用までを伴走してくれる一社が見つかった。とはいえ、導入当初から順風満帆だったわけではない。

「最初の一枚目は思うような結果が出ず、不安もありました。でも、そこで諦めずに何度もすり合わせを重ね、少しずつ読み取り精度を高めていったんです」

取引先ごとに違う商品名の書き方、数字の並び、賞味期限の記し方。人間なら「これはあの会社の書式だ」と経験で補える癖を、AIは最初から知っているわけではない。膨大な帳票を読み取らせ、出てきた結果を確認する。ずれている箇所を見つけたら「ここはこう判断してほしい」と伝える。返ってきた調整を、また一枚ずつ確かめていく。決して派手ではない。地味で根気のいる作業だ。けれど、システム会社と共にその地道なすり合わせを続けたからこそ、大きな成果につながったのだ。

終わりのない仕事が消え、社員たちの笑顔が増えた

成果は、数字にはっきりと表れた。これまで1時間かかっていた入力業務が、10〜15分で完了。およそ8割の削減である。だが、ここで本当に伝えたいのはその削減率ではない。入力業務が減ったことで、現場の一日がどう変わったか、である。

冒頭で「今日、何時に終わるんだろう」とつぶやいていた大坪さんは、こう語る。

「業務時間が短縮されただけじゃなく、お客様それぞれ異なる注文書の書き方の癖なども、システムが自動で判断して処理してくれるので、ミスも大幅に減りました」

人は、データを打ち込む作業から解き放たれ、確認する側に回った。そして、あの毎朝感じていた不安について。

「以前は大量のFAXを前に『何時に終わるのだろう』と憂鬱になることもありました。でも、今ではその不安は全くありません。入力業務が減った分、他のやりがいのある業務に時間を割けるようになったんです」

100枚を超えるFAXは、今でも同じように届く。量自体が減ったわけではない。変わったのは、そのFAXの山を処理するための仕組みだ。物流の現場から終わりの見えない仕事が消え、社員たちの笑顔が増えていった。

インタビューに答えるUmiosロジ株式会社 名古屋物流センターの大坪さん

業務効率化という終わりのない道を、前を向いて歩き続ける。

「AI-OCRの導入によって残業が減り、定時で帰れるようになりました。お子さんがいるスタッフも多いので、時間に余裕ができたのは大きいです。また、そうした気持ちのゆとりが、丁寧なお客様対応にもつながっています。業務効率化を起点に好循環が生まれているんです」

中島さんも、同じ変化を別の角度から見ている。

「電話対応や現場とのやり取りにも余裕が生まれ、物流センター全体のサービスの質が向上したと感じています」

経営企画という立場で現場の業務改善に挑み、大きな成果を生み出した。だが、中島さんの視線はすでに次を見据えている。

「まずは名古屋物流センターで全ての業務を網羅し、次のセンターへと展開していきたい。FAXがデータ化できるのなら、他の複雑な業務も効率化できます。このシステムを活用して、業務改善の波を全国に広げていきたいんです」

そして、こう続ける。

「新しいシステムを導入することで、これまで見えなかった改善点が見えてきました。業務効率化は終わりのない道ですが、一歩一歩進んでいきたいですね」

「終わりのない道」。その言葉に悲壮感はない。むしろ、常に向上し続ける前向きな決意が感じられる。かつて、「この目の前の作業を自動化できないか」と自問自答していた中島さん一人の葛藤は、今や全国の物流センターの業務改善につながる大きな構想へと育っている。

編集後記

印象的だったのは、経営企画部としてAI活用を推進する中島さんが、現場出身だったこと。FAXの山のつらさを、資料の中の課題としてではなく、自分の実感として知っている。だからこそ「設定にリソースを取られては意味がない」という判断が的確で、現場の大坪さんの「今日、何時に終わるんだろう」という声に応える仕組みを生み出すことができた。物流は、社会の当たり前を静かに支える仕事だ。その現場に、終わりの見えない手作業がまだ残っているのも事実だろう。だがUmiosロジには、その当たり前を疑い、自ら手を動かして変えていく人がいる。100枚のFAXは今日も届く。けれど、それを前にした現場の一日は、確かに変わり始めている。

本記事は、Umiosロジ株式会社様へのインタビューをもとに受発注バスターズ編集部が構成しました。

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